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バナジウム二次電池の開発

はじめに

 大和エネルギー研究所は新しいバナジウム電池に関する研究を行っています。自動車のハイブリッド化に対応できる安全な大容量電池の開発、鉛蓄電池に替わるエコ化対応電池の開発、 および電力網のスマートグリッド化に対応できる大型蓄電池の開発を行い、それらの技術を国内外に提供することを目標にしています。


 バナジウム電池とは、バナジウムが持つ4種類の酸化状態の間の酸化還元反応を利用する電池で、バナジウムだけを用いるのが特徴です。古くから、硫酸水溶液中での溶液電池(レドックスフロー電池)が知られていますが、一種類の金属を用いることによる長所と硫酸塩が沈殿することによる機能低下という短所も持ち合わせています。硫酸を使用する限り、固体電池の製造は原理的に困難であり、電池の発展性には限界があります。


弊所はバナジウム二次電池に関して全く新しい概念に基づいて以下の研究を進めています。

  1. ハイブリッド車用に対応する安全な固体電池の開発
  2. 鉛蓄電池に替わるエコで軽量な電池の開発
  3. 従来の硫酸を用いたレドックスフロー電池に替わる大型蓄電地の開発

バナジウム錯体固体電池

 弊所は新しい概念によるバナジウム電池の開発に取り組んでいます。弊所が合成したバナジウム錯体を用いると、活物質をペレット状に固形化にしても酸化還元反応が進行することが明らかになり、この成果を基に、固体電池の開発に成功しました。バナジウム二次電池において、完全 な固体電池の開発は、本研究が世界で最初です。以後、バナジウム錯体固体電池と呼ぶことにします。リチウムイオン電池と同様、ペレットは微量の導電性溶媒により湿らす必要がありますが、非水溶媒も水も使用できるのが特徴です。バナジウム錯体固体電池の起電力は2V 以上で、リチウムイオン電池には劣りますが、リチウムイオン電池に比べ、活物質が安定しているため、安全性は確保されます。現在ハイブリット車で使用されているニッケル水素電池の起電力1.2V に比べると起電力で勝り、将来ハイブリット車用への展開が期待されます。

バナジウム(Ⅲ)錯体(左)とバナジウム(Ⅳ)錯体(右)

バナジウム錯体液体電池

 従来のバナジウムレドックスフロー電池においては、バナジウム硫酸塩が沈殿するという問題があります。弊所はバナジウム錯体電池を液体電池にも適用することを試み、従来からの問題を解決しています。以後、バナジウム錯体液体電池と名付けます。液体は硫酸ではなく非水溶媒を含む混合溶液です。この電池の特徴は、充電後、溶液中の活物質が大気中において安定していることで、これにより長時間の蓄電が可能になります。起電力は約1.5V で、バナジウム固体電池よりも小さいが、配位子の酸化還元反応への寄与を考慮することにより合理的に説明することができます。

FTP電池

 バナジウム錯体二次電池では、陽極と陰極に同じバナジウム(IV) 価錯体を用いても、電池が機能します。この電池を以後FTP電池と名付けます。弊所が開発したバナジウム錯体では、バナジ ウム(IV) 価から(III) 価への還元反応の速度が速いことに起因するもので、硫酸系では起り難い現象です。FTP電池では、活物質が一つで済むことから、電池製造工程が単純化されるという利点があります。

おわりに

 弊所が開発したバナジウム錯体固体電池は、原料が比較的に安価で、構造も単純なため、リチウムイオン電池やニッケル水素電池よりも安価に製造することが可能です。電池としての機能は、エネルギー密度で、リチウムイオン電池には劣るものの、過酷な条件でも安全性が確保される利点があります。電池機能は、計算上ニッケル水素電池より優れており、将来、ハイブリッド車用に使用されることが期待されます。
 

地球規模の環境を考えると、鉛蓄電池の永続的な使用には疑問が生じます。鉛蓄電池の代替には、同じように単純な機構を持つバナジウム錯体液体電池は有力と考えています。また、バナジウム錯体溶液は大気中でも安定であるため、バナジウム錯体液体電池は大規模蓄電池としても期待されます。

=研究体制=

 電池の開発は主に大和エネルギー研究所で行っています。基礎研究に関しては、東京工業大学原子炉工学研究所と東海大学工学部と共同で行っています。

大和エネルギー研究所 所  長 藤本喜久
技術統括 冨安 博(東京工業大学名誉教授、工学博士)
上席研究員 朴 潤烈(工学博士)
客員研究員 木村基哲(工学博士)
奈良県合同砕石株式会社 取締役社長 藤本義人
専務取締役 藤本剛也
共同研究者    
東京工業大学原子炉工学研究所 准教授 塚原剛彦(工学博士)
東海大学工学部 准教授 浅沼徳子(工学博士)